データ保存の仕組み

データ保存の仕組み

知っておきたいパソコン基礎知識


データ保存の方法にはいくつもの手段があります。また、それぞれのストレージによって、データが保存される仕組みがことなります。そのため保存されたデータが削除される方法も異なれば、完全消去となる度合も異なります。ハードディスクとフラッシュメモリでその仕組みが異なりますので、それらを解説することでデータ保存の仕組みをお伝えできればと思います。

データ保存の方法・種類

  1. ローカルストレージ
    • ハードドライブ:コンピュータの内部や外部に接続されたハードディスクにデータを保存。
    • SSD(ソリッドステートドライブ):フラッシュメモリを使用して高速でデータアクセスを行う。
    • USBドライブ:ポータブルなストレージデバイスで、小規模なデータ転送に便利。
  2. リモートストレージ
    • ネットワークアタッチドストレージ(NAS):ネットワーク経由でアクセスできる専用のデータストレージ。
    • サーバー:データセンターに設置されたサーバーにデータを保存し、インターネット経由でアクセス。
  3. クラウドストレージ
    • パブリッククラウド:AWS、Google Cloud、Microsoft Azureなどのサービスを利用してデータをオンラインで保存。
    • プライベートクラウド:企業が自身のプライベートな環境でクラウドサービスを構築。
    • ハイブリッドクラウド:パブリッククラウドとプライベートクラウドの機能を組み合わせた形式。
  4. データベース
    • リレーショナルデータベース:SQLを使用して構造化されたデータを管理。
    • ノンリレーショナルデータベース:柔軟なデータモデルを用いて様々なデータタイプを保存(例:MongoDB、Cassandra)。

クラウドストレージであっても、クラウドデータストレージのサービス提供事業者もハードディスクやテープなどのデータ保存を採用しています。

ハードドライブのデータ管理

ハードドライブは、磁気ディスクにデータを読み書きすることで情報を保存するデバイスです。ハードディスクの内部には、同心円状に区切られた「トラック」と呼ばれるドーナツ状の領域があり、さらにそれを細かく分割した「セクタ」と呼ばれる領域があります。データはハードディスクに保存される際、セクタ単位で格納されます。

一般的なハードディスクのセクタ容量は、1セクタあたり512バイト(0.5KB)または4,096バイト(4KB)です。通常、OSはセクタ単位ではなく、複数のセクタをまとめた「クラスタ」単位でデータを管理します。WindowsのNTFSフォーマットでは、一般的にクラスタサイズは4KBに設定されています。この場合、1セクタが512バイトの場合、8セクタで1クラスタとなります。

クラスタはWindows上でのファイルの最小単位であるため、どんなに小さいデータでもハードディスク上では最低4KBの容量を使用します。例えば、10KBのファイルの場合、3つのクラスタに分割され、合計で12KBのデータ領域を消費します。

さらに、1つのファイルが連続したクラスタに書き込まれるとは限りません。既に他のファイルが存在し、空き領域が分散している場合、そのファイルは断片化されて複数の分散したクラスタに書き込まれることがあります。

以下にその基本的な仕組みとデータ管理のプロセスを説明します。ハードドライブ上でのデータの管理と保存の仕組みについて解説します。

1. データの保存の基本

ハードドライブは一つまたは複数の平らな円盤(プラッター)から構成されています。これらのプラッターは非常に高速で回転し、磁気ヘッドがデータを読み書きします。プラッターの表面は磁性体でコーティングされており、磁気ヘッドを使用してこの表面にデータを磁気信号として記録します。

2. データの記録

  • トラックとセクタ:データはプラッターのトラックに沿って記録されます。トラックはプラッターの円形の線で、さらに小さな単位であるセクタに分割されます。
  • 書き込みプロセス:データを書き込む際、磁気ヘッドは電気信号を受け取り、それを磁気エネルギーに変換してプラッターの特定のセクタに保存します。

3. データの読み取り

  • 読み取りプロセス:データを読み取る際、磁気ヘッドがプラッターの表面を飛び越え、磁気信号を検出して電気信号に変換し、コンピュータが解析できる形式にします。

4. 管理とオーガナイゼーション

  • ファイルシステム:ハードドライブ上のデータは、FAT32、NTFS、exFATなどのファイルシステムを使用して管理されます。ファイルシステムは、データの格納方法とアクセス方法を定義し、ファイルやフォルダの階層構造を提供します。
  • インデックス作成:効率的なデータアクセスのために、多くのファイルシステムはインデックスやディレクトリ構造を使用してファイルの場所を追跡します。

5. メンテナンスと最適化

  • デフラグメンテーション:ファイルの断片がディスク上で散らばっていると、読み取り速度が低下することがあります。もともとは連続したクラスタに保存されていたデータが大きなファイルを扱うことによって、離れたクラスタに保存されてしまうことを「フラグメント」と言います。これを解決する手段としてデフラグツールを使用してファイル断片を連続的に配置し直すことで、アクセス速度を向上させます。
  • バックアップ:データ損失を防ぐために、重要なデータの定期的なバックアップが推奨されます。

フラッシュメモリのデータ管理

フラッシュメモリはその高速性、耐久性、および省エネ性から、モバイルデバイスや高速ストレージソリューションで広く利用されています。フラッシュメモリはハードドライブとは異なり、可動部分がなく、データを電子的に保存します。

USBメモリやSDカード、SSDには、データを保存する半導体チップであるフラッシュメモリが搭載されています。フラッシュメモリにはNAND型とNOR型があり、一般向けのデータ記録媒体としては、安価で大容量のNAND型フラッシュメモリが使用されています。

フラッシュメモリには、1ビットから数ビットのデータを記録できる「セル」が多数搭載されています。これらのセルが複数集まって「ページ」を形成し、ページがデータ記録および読み取りの最小単位となります。

フラッシュメモリの特徴として、「データの書き込みや消去はできるが、書き換えはできない」という点があります。さらに、データを消去できるのは「ブロック」と呼ばれる単位で、複数のページで構成されます。このブロックは、容量が数KBから数十KBあります。

データの上書きは、書き換えるブロックのデータを全て削除し、修正後のデータを新しく書き込むことで行われます。そのため、例えば10KBの文章の中の1文字を修正するだけでも、ブロック単位で全体を削除して書き換える必要があります。

フラッシュメモリの基本構造

フラッシュメモリは、NAND型とNOR型の二つの主要なタイプに分かれますが、データストレージには主にNAND型が使われます。NAND型フラッシュメモリは、高密度でデータを保存でき、書き込み・読み出し速度も速いです。

データの保存方法

  1. セルの構造
    • フラッシュメモリは多数のフラッシュセルで構成されており、各セルはトランジスタを基にしたフローティングゲートが特徴です。フローティングゲートは、電子をトラップ(閉じ込め)して、セルが保持するデータ(ビットの状態)を決定します。
  2. データの書き込みと消去
    • プログラミング(書き込み):電子をフローティングゲートに注入してビット状態を「0」に変更します。これは高電圧を適用することによって行われます。
    • 消去:セルから電子を取り除き、ビット状態を「1」に戻します。フラッシュメモリではブロック単位でデータを消去する必要があります。
  3. 読み取り
    • データの読み取りは、セルにストアされている電荷の有無を検出することによって行われます。フローティングゲートの電荷状態によってトランジスタの導通性が変わるため、これを利用してデータの「0」または「1」を判断します。

データの整理と管理

  • ウェアレベリング:フラッシュメモリは書き込み回数に制限があるため、ウェアレベリングという技術が用いられます。これはデータの書き込みがメモリ全体に均等に分散されるように管理することで、メモリの寿命を延ばします。
  • エラー訂正コード(ECC):フラッシュメモリは時間が経つにつれてデータが破損しやすくなるため、ECCを利用してデータの正確さを保ちます。これにより、読み出し時に発生したエラーを検出し、訂正することができます。

ウェアレベリングとは

ウェアレベリングはフラッシュメモリの寿命を延ばすための重要な技術です。フラッシュメモリセルは、書き込みと消去の回数に制限があり(通常数千から数万サイクル)、これを超えるとセルの信頼性が低下し、最終的には故障する可能性があります。

ハードディスクでは、磁性体の磁気状態を変化させることでデータを記録するため、同じ箇所にデータの書き込みや消去を繰り返しても機械的な故障がなければ劣化しません。しかし、フラッシュメモリは電子の移動によってデータを記録するため、絶縁体の劣化などの影響で、同じセルに書き込みや消去を繰り返すと一部のセルが読めなくなることがあります。したがって、フラッシュメモリには書き換え回数の上限があります。

データの書き換えがブロック単位で行われるため、頻繁な編集を行うと、何度もブロックごとの消去と書き込みが発生し、同じブロックが繰り返し使われると書き換えの上限に達して故障するリスクが高まります。これを防ぐために、フラッシュメモリでは「ウェアレベリング」という技術を用いて、ブロックごとの使用回数を均等化し、フラッシュメモリの寿命を延ばしています。

ウェアレベリングはUSBメモリやSSDに搭載されたコントローラチップによって実施されます。これにより、OSから指定されたブロックのアドレスと実際の書き込みブロックのアドレスが置き換えられ、使用頻度の低いセルにデータが書き込まれるようになります。したがって、OS側で連続したデータを連続したブロックに書き込んだつもりでも、実際にはコントロールチップによってアドレスが変更され、データが分散して書き込まれることがあります。

ウェアレベリングは、この問題に対処するために、メモリセルへの書き込み負荷を均等に分散させる手法です。主に二つのタイプのウェアレベリングがあります:

1. スタティックウェアレベリング(静的ウェアレベリング)

  • 概要:スタティックウェアレベリングでは、メモリ内のすべてのデータブロックが等しく使用されるようにします。これには、頻繁に書き換えられないデータ(静的データ)も含まれ、これらのデータも定期的にメモリ内の他のブロックに移動されることがあります。
  • 利点:全てのメモリセルが均等に使用されるため、メモリ全体の耐久性を最大限に引き出すことができます。
  • 適用場面:高価なエンタープライズ級ストレージシステムなど、長期間にわたる信頼性が要求される環境でよく使用されます。

2. ダイナミックウェアレベリング(動的ウェアレベリング)

  • 概要:ダイナミックウェアレベリングでは、頻繁に書き換えられるデータ(動的データ)を中心にブロックの使用を管理します。使用されていない、またはあまり使用されていないブロックにデータを書き込むことで、メモリセルの使用を均一にします。
  • 利点:メモリの書き換え回数を効率的に管理し、デバイスの寿命を延ばすことができます。
  • 適用場面:消費者向け製品や比較的コストが抑えられる必要がある製品で一般的です。

ウェアレベリングの効果

ウェアレベリング技術を用いることで、メモリセルの一部が他の部分よりも早く劣化するのを防ぎ、全体としてのフラッシュメモリの寿命を均等に延ばすことができます。これは特に、データセンターやエンタープライズ環境など、データの信頼性と持続性が重要な場面で効果を発揮します。

まとめ

コントロールチップが故障すると、記録チップのデータを直接読み取っても、複数のブロックに分散したデータを1つのファイルとして統合することができなくなります。データスマートでは、コントロールチップの制御情報を解析し、再現する技術を用いて、分散したデータの復旧と復元を行っています。

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