ハードディスクドライブ(HDD)のデータ記録技術

PMR(Perpendicular Magnetic Recording)とSMR(Shingled Magnetic Recording)は、ハードディスクドライブ(HDD)で使用されるデータ記録技術です。これらの技術は、HDDの記録密度を高め、より多くのデータを物理的なサイズを変えずに保存できるように設計されています。

ハードディスクのデータ復旧事例

PMR(Perpendicular Magnetic Recording)

PMRは、従来の磁気記録技術である縦磁気記録(LMR: Longitudinal Magnetic Recording)の後継として開発されました。PMRでは、磁気ビットがディスクの表面に垂直(直角)に配置されます。この配置により、ビット間の磁気干渉を減少させ、ディスク面上のビット密度を大幅に向上させることができます。PMR技術の導入により、HDDのストレージ容量は飛躍的に増加しました。

SMR(Shingled Magnetic Recording)

SMRは、さらに記録密度を高めるために開発された技術です。この技術では、磁気トラックを屋根瓦(シングル)のように部分的に重ねて配置します。重ねることで、トラック間の空間を削減し、ディスク上により多くのトラックを配置できるようになります。

しかし、この配置により、データの書き換えが複雑になり、特定の条件下では書き込み速度が低下する可能性があります。SMRドライブは、主にアーカイブやバックアップといった、読み出しが多く書き込みの少ない用途に適しています。

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書き換え速度が遅いため、一般個人が利用するには利用しづらいです。また、復旧難易度も高いです。そのため、データセンターでの利用など書き換えがそれほど発生しない状況下で性能を発揮します。

CMR(PMR)

  • 垂直記録方式: データビットをディスクの表面に垂直に記録します。これにより、ビット間の磁気干渉を減らし、ディスク面積あたりのデータ密度を高めることができます。
  • 高い互換性とパフォーマンス: CMRドライブは、データの書き込みや読み出しにおいて、SMR技術を使用するドライブに比べてパフォーマンスの面で優れています。書き込み速度が安定しており、ランダムアクセスの性能も高いです。
  • 一般的な用途に適している: CMRドライブは、日常的なコンピュータ使用から、エンタープライズレベルのデータセンターまで、幅広いアプリケーションに適しています。

CMRとSMRの比較

  • 記録密度: SMRはCMRに比べて記録密度が高く、同じ物理サイズのドライブでより多くのデータを保存できます。
  • 書き込み速度: CMRドライブは一般に、SMRドライブに比べて書き込み速度が速いです。SMRドライブではデータの書き換えに特別な処理が必要なため、性能が影響を受けることがあります。
  • 用途: CMRドライブは、一般的なデータストレージやアプリケーションに適しています。一方、SMRドライブは記録密度が高いため、大容量のデータアーカイブやバックアップに適していますが、頻繁な書き換えが必要な用途には不向きです。

CMRとSMRは、HDDの容量を増やすために重要な技術であり、特定の用途に応じて選択されます。技術の進化により、これらの技術を組み合わせたり、新しい記録技術の開発により、将来的にはさらに高密度で高速なデータストレージソリューションが提供されることが期待されます。

CMR(PMR)は日本人が開発者

PMR(Perpendicular Magnetic Recording、垂直磁気記録)技術は、日本人科学者の飯田弘之(ひろゆき)博士によって大きく発展しました。飯田博士は、この技術の基礎を築き、ハードディスクドライブ(HDD)の記録密度を大幅に向上させるための方法を提案しました。PMR技術は、磁気ビットをディスクの表面に垂直に配置することで、ビット間の磁気干渉を減少させ、ディスク面上のビット密度を高めることができます。

飯田博士の研究とその後の開発は、HDDのストレージ容量の飛躍的な増加に貢献し、データストレージ産業における重要な転換点となりました。その結果、個人用コンピュータやサーバーなど、幅広いアプリケーションで使用されるHDDの容量を大幅に増やすことができるようになりました。

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